基礎知識 2022.12.28

【5分解説】FIT(固定価格買取制度)って何?売電の仕組みを分かりやすく解説!

「FIT(固定価格買取制度)」という言葉、皆さんは聞いたことがありますか?
再生可能エネルギーや太陽光発電について情報を収集する中で、おそらく耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

とはいえ、その実態や詳細な内容まで理解している方は少ないのではないでしょうか?
そこでこのコラムでは、FIT(固定価格買取制度)についての歴史や仕組み、今後の課題や現在の取り組みについて詳しく解説していきます。
この記事を最後まで読むことで、きっとFITについての理解がより一層が深まることでしょう。

FIT(固定価格買取制度)の概要

FIT(固定価格買取制度)とは?

「FIT(フィード・イン・タリフ/フィット)」または、「固定価格買取制度」は、再生可能エネルギー源(太陽光、風力など)で発電された電力を、政府が設定した価格に基づいて電力会社が購入することを義務付ける制度ですこの名称は英語の「Feed-in Tariff」の頭文字を取っています。

ドイツでは1991年、スペインでは1992年に先駆けてこの制度が導入され、日本でも2012年から施行されています。

日本におけるFIT制度導入の背景

FIT制度が採用された大きな理由の一つに、再生可能エネルギーの普及が挙げられます。
日本のエネルギー自給率が低いため、外部からのエネルギー供給に大きく依存しています。また、地球温暖化対策として、化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーの利用を増やす必要性もあります。

FIT制度には、「エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及びエネルギーの供給に係る環境への負荷の低減」という理念を掲げています。
つまり、FIT制度の主な目的は、再生可能エネルギーの普及促進と、エネルギー供給の安定化、さらには環境負荷の低減による持続可能な社会の実現に寄与することです。

FIT(固定価格買取制度)の仕組み

図:FIT(固定価格買取制度の仕組み)


再生可能エネルギーによる発電は、その初期投資や運用コストの高さから、化石燃料を用いた発電に比べて高額の買取価格が設定されます。これにより、電力会社が買い取る際の経費は必然的に増加します。
その経費を補填するため、電力利用者(企業や家庭)から「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として追加料金を徴収しています。これにより、高い経費がかかる再生可能エネルギーの普及を支えているのです。

再生可能エネルギーに対する買取価格は「固定価格と呼ばれ、その価格は一度決定された期間中は変動しません。例えば、2021年度時点では、家庭用太陽光発電(10kW未満)の買取期間は10年、地熱発電は15年、事業用太陽光発電(10kW以上)、風力、水力、バイオマス発電は20年間と定められています。その期間中は電力会社が定められた価格で電力を買い取ることが保証されています。

この制度により、2016年には、再生可能エネルギー発電のための買取価格として総計約2兆3千億円が支出されました。
この莫大な費用は、電力利用者からの再エネ賦課金によって賄われてい
るのです。

再生可能エネルギーの買取価格の推移

それでは、太陽光発電による電力の買取価格(売電価格)の変遷を見てみましょう。
買取価格や買取期間は、各エネルギー源ごとに、事業が効率的に進行するために通常必要とされるコストをもとに、適正な利益などを考慮して定められます。具体的には、中立的な調達価格等算定委員会の意見を尊重し、経済産業大臣が最終決定します。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁,買取価格・期間等(2022年度以降)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html

FITでの買取方法について

FIT認定を受けるために事業計画の認定が必要

太陽光発電設備を設置しても、生成した電力が自動的に販売されるわけではありません。
FITを利用し、売電収益を得るためには、国からの「設備認定」が必要です。設備認定とは、発電所が国の設定した基準を満たしているかどうかを、経済産業省が確認する作業です。電力会社と電力販売契約も、この設備認定が行われ、認可されることが前提となっています。

事業計画認定の手続きや流れ

発電設備を設置するまでの流れ

ケースによっては手続きの順番が前後することもありますが、ここでは一般的な手続きの流れをモデルケースとして紹介します。

引用:経済産業省 資源エネルギー庁「発電設備を設置するまでの流れ」

事業計画認定申請書の作成

申請に進む前に、経済産業省が公表している事業計画策定ガイドラインを必ず確認してください。
以下に示す画像は、弊社が提出した事業計画認定申請書のサンプルデータです。


申請書類の提出

必要事項を入力し、申請書を出力した後、記載内容を確認します。
GビズID認証が完了すると、申請内容が送信されます。その後、申請書(添付書類は不要)と返信用封筒(切手を貼付し、返送先の宛名・住所を記載)を、発電設備の立地場所に該当する都道府県の経済産業局へ送付してください。

設置者の承諾

認定通知書が申請者に届きます。

審査~認定

申請から認定までの期間は、通常3ヶ月程度となります(バイオマスの場合は4ヶ月程度)。
ただし、これは接続契約書が添付されているなど、申請書類に不備がない場合の目安です。

FITの今後の課題と取り組み

再生可能エネルギー発電促進賦課金の問題

小売電気事業者が発電事業者から電力を購入する際の経費の一部は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」により、電力利用者が負担する形で電気料金に加算されています。
その結果、電力利用者が一部の経費を負担することで、小売電気事業者は火力発電と比較してコストが高い再生可能エネルギーを購入しやすくなります。
これにより、再生可能エネルギーが安定的に買い取られ、再エネ発電事業者は事業の継続運営と普及を実現しやすくなるという仕組みが確立されています。
再エネ賦課金は全国で一律の金額が適用されていますが、毎年調整が行われています。しかし、その金額が毎年増加し、利用者に対する負担が増大しているという問題が指摘されています。

FIT法の改正

令和4年(2022年)4月1日から、電気事業者による再⽣可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法は改正され、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となりました。改正の主な内容は以下の通りです。

市場連動型の導入支援

再生可能エネルギー発電事業者の投資予見性を確保しながら、市場を意識した行動を奨励するため、固定価格で買い取る制度(FIT制度)に加えて、新たに市場価格に基づいて一定のプレミアムを付加する制度(FIP制度)を導入します。

再生可能エネルギーのポテンシャルを活かす電力系統の強化

これまで地域の送配電事業者が負担していた、再生可能エネルギーの導入拡大に必要な地域間連系線などの電力系統強化の費用の一部を、賦課金方式を用いて全国で支える制度を新たに設立します。

再生可能エネルギー発電設備の適切な廃棄

太陽光発電設備が適切に廃棄処理されない可能性に対応するため、発電事業者に対して、廃棄処理のための費用に関する外部積立の義務を新たに課します。

認定失効制度

未稼働プロジェクトの電力系統容量を適切に解放し、新規事業者による利用を可能にするため、新たに失効期限を設けます。

2022年4月開始の「FIP制度」

FIP制度とは「フィードインプレミアム(Feed in Premium)」の略称で、発電事業者が再生可能エネルギーから発電した電力を卸電力取引市場で自由に売電させる制度です。そして、得られた売電収入に「あらかじめ定められた売電収入の基準価格(FIP価格)と市場価格(参照価格)の差額(=プレミアム)×売電量」の金額を上乗せして交付します。
FIT制度と異なり、この制度では電力が固定価格で買い取られるのではなく、再エネ発電事業者が卸市場などで電力を売却した際に、その売電価格に一定の補助金額(プレミアム)を上乗せすることで再エネ導入を促進します。プレミアム分は電力使用者から徴収する賦課金で賄われますが、FIT制度と比べると比較的少ない金額に抑えることが可能です。

また、参照価格は一定期間(1ヶ月〜1年程度)ごとに変更することで、事業者の投資予見性を確保しつつ、市場価格を意識した発電行動を促進することが可能です。
FIP制度は再エネ自立化への一歩として、電力市場への統合を推進しながら、投資インセンティブが確保されるように支援する制度です。
そのため、FIP制度を構成する各要素は、FIT制度から他の電源と共通の環境下で競争するまでの中間的な位置付けとなります。

まとめ

この記事では「FIT制度」について解説しました。再生可能エネルギー発電の急激な拡大は、FIT制度の導入が大きなきっかけとなりました。しかし、その一方でFIT制度の導入によって、賦課金の高騰という新たな課題も生じました。これらの問題を解決する手段として、「FIP制度」が導入されることが決定しました。この新制度は再生可能エネルギーを段階的に電力市場に統合するための措置です。特に、新規に認定される一定規模以上の施設については、FIP制度のみが適用されます。

加えて、新規認定でFIT制度が適用される対象についても変更があります。50kW以上の発電能力を持つ施設では、事業者の希望に応じてFIP制度による新規認定を選択することが可能になりました。
さらに、すでにFIT認定を受けている50kW以上の施設についても、事業者が希望する場合にはFIP制度への移行が可能です。
このように、FIT制度とFIP制度が今後共存することになります。両制度が進んで利用されることで、国内の脱炭素化の取り組みがさらに推進されることでしょう。

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