基礎知識 2022.04.07

【5分解説】自己託送とは何か?仕組みやメリット・デメリットについて解説!

近年、ビジネスの持続可能性を求める声が高まり、再生可能エネルギーの導入が企業の競争力を左右するキーファクターとなっています。
再生可能エネルギーを取り入れていない企業は、取引先との関係が悪化するリスクやブランドイメージの低下といった実際の問題に直面しています。

しかし、「再生可能エネルギーを導入したいが、適切な設置場所がない」という理由で躊躇している企業も少なくありません。

こうした企業の課題を解決する方法として、「自己託送」スキームがあります。
「自己託送」スキームとは、電力会社の送電線を利用して、ある場所で生成された再生可能エネルギー(太陽光など)を別の場所で使用するというものです。
この方法により、発電設備を直接設置する場所の制約から解放され、幅広い選択肢が得られるようになります。

このコラムでは、「自己託送」の仕組み、それがもたらすビジネスのメリット、考慮すべきデメリットについて解説します。
(ただし、この方法は送電線の利用可能な容量に制限があるため、導入を検討する前に、利用可能な容量の確認が必要です。)

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自己託送とは?

自己託送」とは、自社が遠隔地に持つ発電施設から生み出される電力を、直接自社の活動に活用するための仕組みです。
具体的には、自社の敷地内に太陽光パネルの設置スペースが足りない、あるいはすでに上限まで設置済みの企業も、他地域に新しく設置した太陽光発電施設からの電気を、自社で使うことができます。
このスキームによって、既存の施設だけでなく新たな発電場所の設置も検討できるようになるため、次世代の再生可能エネルギー利用戦略として、多くの企業から注目されています。

自己託送のイメージ図

自己託送の仕組み

遠隔地で発電した電気を施設で使用する際、最初に親会社や子会社、あるいはグループ会社など、自社と深いつながりのある場所を選びます。
そして、その場所で発電を行います。この生成された電気は、電力会社が所有する送配電網を通じて、自社の主要施設やオフィスに供給されるのです。これが「自己託送」の基本的な構造です。

自己託送の種類

自己託送には2つの主要な形態が存在します。
どちらも独自の利点がありますので、企業の状況に合わせて選択することが重要です。

①自己託送

自社の施設と親密な関係にある遠隔地に太陽光発電所を設置し、そこから発電した電気を送電する一般的な自己託送です。
親会社や子会社、グループ会社など親密な関係にある施設を遠隔地に所有している企業に対しておすすめできる方法です。

②オフサイト自己託送

オフサイト自己託送とは、自社施設から距離がある場所、そして自社と直接の関係がない遠隔地に太陽光発電所を設置し、その場所で生成された電力を施設に供給する方法です。
特に、直接の関係を持つ遠隔地に設置できるスペースが限られている企業にとっては、この方法が有効です。

しかし、現状では、日本国内でこの方法を採用している実例は1件のみ。
そして、その貴重な1件に、弊社(株式会社FD)が関与しています。このプロジェクトは、ソニー株式会社様やデジタルグリッド株式会社様との共同で実現され、不可能とされていたこの手法を現実のものとすることができました。

▼日本初のオフサイト自己託送の取り組みは、以下のリンクからご覧いただけます。
牛舎を利用した太陽光発電のオフサイト自己託送

自己託送の4つのメリット

自己託送が大きな注目を集める要因となっているメリットは次のとおりです。

①パネル設置スペースの制限がない

自己託送の最大のメリットは、自社の施設に太陽光パネルを設置するスペースがない場合でも、遠隔地での太陽光発電所の所有や利用が可能であることです。
確かに、施設と親和性を持つ地域での設置が前提となりますが、スペースの問題だけで太陽光発電の導入を見送る必要はもうありません。

②電気代を削減できる

自己託送は、他の太陽光発電のスキームと同様、自己消費を通じて電気料金を大幅に削減することが可能です。
特に、自社施設の屋根の限られた面積での設置となるオンサイト型とは異なり、自己託送では大規模な工場や屋外での設置といった選択肢が選べます。
これによって、オンサイト型に比べてさらに電気料金の大幅な節約が期待できるのです

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③再エネ比率の向上

オンサイト型の太陽光発電は、自社施設の屋根や敷地内を設置エリアとして利用するため、設置できる面積や発電量に自然な上限が存在します。
一方、自己託送を採用すれば、遠隔地に広範囲の太陽光発電所を設置することが可能となり、自社施設の面積の制約を受けずに発電量を多く増加させることができます。
これは、企業が再生可能エネルギーの取り組みを進める際の強力なアドバンテージと言えるでしょう。

④余剰電力の効率的な活用

オンサイト型の太陽光発電では、定休日などの発電量が消費量を超える時間帯に、余剰の電力が生まれることがあります。
この余剰電力は部分的に電力会社に売電されるものの、そのすべてが最大限に活用されるわけではありません。
しかしながら、自己託送を活用すれば、定休日に生じる余剰電力を他の稼働している施設に転送し使用すること可能です。
異なる定休日を持つ子会社や関連会社への電力供給を通じて、余剰電力をより効果的に活用することができます。

自己託送の5つのデメリット

自己託送のメリットに目が行きがちですが、デメリットも理解することで全体的な判断が可能になります。
ここからは自己託送における主なデメリットについて詳しく解説します。

①需要量や発電量の計画値の提出が必要

計画値同時同量制度の仕組み

自己託送をスムーズに実施するため、計画値同時同量制度の要件を遵守することが必要です。
計画値同時同量制度は、電力供給の安定を目的とする制度で、電力供給者は30分ごとの電力の需要と供給を予測し、その予測値を一般配電事業者(電力会社)へ提出しなければなりません。
太陽光発電の出力や企業の電力需要の変動に伴い、この予測値もかわることから、日常的な監視と管理が必須となります。

②ペナルティを課せられる可能性がある

計画値同時同量制度においては、電力供給者は自身の電力供給計画を精密に立てることが求められます。
これは、計画値と実績値が一致しない場合、「インバランス制度」によりペナルティを課される可能性があるからです。
電力供給の計画値と実績値の差があると、電力系統は不安定になり、供給の安定性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
その結果、その調整費用として追加料金が発生します。
したがって、電力供給者は、天候や過去の需要実績などを基に精密な予測が行うことが重要です。

③導入に高いハードルが存在する

太陽光発電所の設置だけでも、設置費用や材料費、メンテナンス費などの大きなコストが発生し、導入のハードルは相当に高いです。
さらに、自己託送制度はまだ全国的には活用例が少なく、電力会社も対応に不慣れであるため、協議が難航し時間がかかることが予想されます。
電力会社の許可がなければ送配電ネットワークが許されませんから、オンサイト型と比較しても導入のハードルは一段と高いと言えます。

④補助金の活用が難しい

太陽光の導入に際し、補助金を活用することでコスト負担を軽減することが一般的です。
しかし、自己託送を選択すると、この補助金の活用が困難となります。
これは、自己託送がまだ広く普及していない理由の一つとも考えられます。

▼各種補助金の活用や、申請に関する支援情報はこちらをご覧ください。

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【2023年・令和5年度】法人向け太陽光発電の補助金を解説!

⑤BCP(事業継続計画)対策としての利用が難しい

太陽光発電所の魅力の一つとして、停電時や災害時に自立運転を行い、電力供給を続ける能力があります。しかし、自己託送では停電が発生した場合、送電が停止してしまいます。
そのため、BCP対策として太陽光発電を期待するのは難しいです。

▼BCP対策の詳しい解説はこちらをご覧ください。
BCP対策とは?

まとめ

自己託送は、太陽光発電の導入を検討しているが設置スペースが制限されている企業にとって、極めて魅力的な制度となっています。
遠隔地からの送電により、電力量の増加、余剰電力の有効活用、そして再エネ比率の向上という大きな利点が得られます。
しかしながら、自己託送は高度なスキームであり、さまざまな制約や制度、提出書類などにより一定の負担が伴うデメリットも存在します。

このコラムでは、自己託送の基本的な概要から、そのメリット・デメリットについてご紹介しました。再生可能エネルギーの導入検討の際には、ぜひ自己託送も視野に入れて考えてみてください。


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